───あんなに竹だったっけ?
近所の小さな山を見て言った。数年前まで山裾にしかなかったような気がする竹林が頂上のほうまで広がっている。
───商品としてタケノコ採りをする人がいなくなったからね。
なるほど、僕の思った数年前の竹林というのが2011年より前ということが判明する。
僕の目の前に見える、ドラえもんに出てくる学校の裏山みたいな山では竹林が広がっているが、もっと田舎のほうでは食べ物が少なくなったイノシシが山から下りてきて、山裾のタケノコを食い尽くしてしまい、竹林が弱っているらしい。
───あのさ、関係ないけど、ちょっと欲しいものがあって、6万くらいするんだけど、どう思う?
───事の次第による。
事の次第。なりゆき、6万を使う理由、ロジック。
30過ぎのおっさんにとっては、手の届かないような高額ではなく、使おうと思えばいつでも使える6万。けど、もう若いころのように一人で生きてる的適当さでカネを使うことが出来ない。シャカイテキセキニンによって、6万を使うための至極真っ当で誰もが納得するロジックが必要なのだ。
先日は完璧なロジックによって13万円のPCを買った。なぜなら、買わないとPCが家に一台もなくなってしまうからだ。なにも13万もするPCじゃなくても良いはずだけど、そこはロジックの組み方次第、ちょっとの工夫でより良いPCを手に入れることができた。しかし、今回の6万には明快で納得のいく根拠を見いだせないため、僕はなかなかコレを手にすることは出来ないだろう。
6万に思いを馳せる。大した額じゃないよなあ。こんなケチな額であれこれ頭を悩ませている己の小ささよ。でもどんなに少額でも、シャカイテキセキニンがあるならきちんとロジックを組まないとダメだよね。どこかの政治家の5000万円の借用書みたいなもので世の中が成り立っていくなら誰も苦労しないのである。
ちょっと前までは10万の革ジャン買ってもいいかなとか思ってたけどさすがに今は買えないと思うようになってしまったよ。
その日暮らしでカパカパお金使ってた過去を呪い、物欲に栓をしても何かが劇的に変わるわけでもない社会ってなんですか!
謎の呪文、シャカイテキセキニンヲトモナウ、です。