前回記した話に、新たな動きがあった。結論から言えば、ひとまずシンバは生きている。

社長にも良心の呵責はあった。

小さいながらもの一企業の長として、近隣住民とのトラブルを抱えるわけにはいかない。かといってシンバを一から躾けることは自分には出来ないだろう、そして家族の助けも得られない。このまま保健所からシンバを連れ戻しても、同じようなトラブルが起きることは目に見えている、だからシンバは手放すしかない。しかし、このまま保健所で処分というのはあまりにも酷い仕打ちではないだろうか。

そう考えて、シンバはひとまず保健所から社長の親戚の家へと移ることになった。これでシンバは一命をとりとめたが、まだ根本的な解決には至っていない。

その後も色々と進展はあるものの、文章に記すのはここまでにしたい。

シンバの一件以来、村上春樹さんの壁と卵の話の事をよく考えていた。多くの人が、ひとまず卵の側に立って物事を考えていくというのは、必ずしも絶対に正解にたどり着く確証はないけれど、致命的な間違いへは絶対に進まないよなー、と。

不条理の種に対抗する唯一の手段かもしれない。

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